沓稲荷社

(くついなりしゃ/川崎市多摩区宿河原1丁目)

取材日:2007年2月7日
奉納日:2007年2月11日

小田急線登戸駅から徒歩10分程度、船島橋の交差点からちょっと入った住宅地の中にあるお稲荷さんです。珍しい名前の稲荷ですが、このすぐ近くにある「船島稲荷」とも関係がありそうです。

交差点から路地に入ると、そこは閑静な住宅街。神社らしいものは見当たらない、と思ったその時、ある住宅の中にいきなり見えてきたのが、この赤い鳥居です。この門は神社の、というより、すぐ右手にある住居のものなのです。一瞬、勝手に入ってもいいのかしらん?と迷ったほどです。
鳥居に掛けられた神額には、「正一位沓稲荷伏見」とあり、ここが明らかに伏見稲荷から勧請を受けたものであることを示しています。
実は近くにある「船島稲荷」も別名「沓稲荷」と言い、その社には名前にちなんだワラジが奉納してありました。この沓稲荷社とはどういう関係にあるのでしょうか?
奥に入ってみましょう。2番目の鳥居は、神明鳥居系と思われます。鳥居の奥には赤い祠が、そしてその手前には眷属の狐の赤い前掛けがちらりと見えています。左手には摂社でしょうか、いくつかの石の祠が並んでいます。
お社は全面真っ赤に塗られています。左手の椿の葉の濃い緑との対象が強烈ですね。扉の前には小さなおきつねさんも見えます。
なんとかわいらしいおきつねさんでしょう。両側に榊を従え、堂々とお社を守っているようです。お水や塩も捧げられて、きちんと祀られていることがわかります。
手前にあった狐たちです。おむすび型の顔は以前どこかで見覚えのある形です。尻尾は少し細めで、しなやかですが力強さも感じます。つぶらな目も、きっちりこちらを見据えていますね。前脚には宝珠を抱え、なかなか精悍な感じです。
これはその左手のきつね。足元には子狐がじゃれています。口元は少々開いていて、子狐をいなしているようです。
子狐を抱えた母狐はよく見かけますが、こういうかたちでじゃれている子狐は珍しいです。母狐の腕に下からしがみついています。腕に噛み付いているようにも見えますね。
これは参道の左手にある手水舎(ちょうずや)です。稲荷神社によく見られる、火山岩石の塀で囲まれています。
これは最初の鳥居から右手に入った、住宅側にあった石狐です。やけに胴が長く、伏せた形に造られています。尻尾や手足は少々短めです。所々に赤い彩色の跡が残っています。
これは左手の狐です。足元には子狐がいます。こちらの子狐は母親の腕の下に押さえられながら、こちらを見ています。母親の口はやはり少し開いているのがわかります。狛犬の「阿吽」でいえば「阿」にあたるのでしょう。
子狐を見るとわかりますが、かなり大雑把な造型です。素朴な感じで、これもまたいいものですね。
母狐の顔は、やはりなんとなく優しげに見えます。開いた口元からはどんな声が出るのでしょうか?

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