西森稲荷神社

(にしもりいなりじんじゃ/横浜市南区蒔田町)

取材日:2006年3月18日
奉納日:2006年3月31日

横浜市営地下鉄1号線の蒔田(まいた)駅から歩いて10分ほどにある稲荷です。住宅地の中の迷路のような細い路地を歩いていると、その奥の方にまるで隠されているように顔を見せてくれるのが、この稲荷です。
でも、この稲荷。意外にも奥が深く、とんでもない展開になっているのでした!


地図を頼りに歩いていて、路地の奥にちらりと見えたこの赤い鳥居。
はたして、ここにはどんな稲荷があるのでしょうか?期待に胸が膨らむ瞬間です。
路地を歩いて近づくと意外にも大きな鳥居にびっくり。そして、その奥には稲荷にしては地味な仕上げのお社があります。
額には「西森稲荷大神」とあります。
なんてシンプルな稲荷、と思ってふと横を見ると、なんと横にも、そしてさらに上にも稲荷の世界が広がっているではないですか!
これは、思いもよらないことでした。
入り口のすぐ右手にあるのがこの祠です。やや、ひしゃげてしまったような社ですが、ちゃんと狛狐に守られています。
なかなか精悍な狐です。口をきりりと結んで、相棒の方をにらんでいます。
こちらは「阿吽」でいえば阿の方でしょうか。口を開いています。
その前脚には、子狐が抱かれています。
前脚で抑えられてる子狐は、たいてい「やんちゃ坊主」風なのですが、この子狐は、けっこう大人しく身を伏せていますね。よほどママが怖いのでしょう。
そして、その横にあるもうひとつの稲荷です。これは「三笠山大神」というものらしい
こちらには、ちいさな狐がいっぱいです。こんなにたくさんの眷属に守られていたら、さぞ神様も安心なことでしょうね。
そして、後ろを振り向くと、そこには延々と階段が伸びています。そして、その所々には様々な祠が祀られています。
それでは、早速、上ってみましょう。
階段の上り口にあった洞穴の狐たちです。野毛の成田山別院にも、このような洞穴の祠がありましたね。
狐は穴の中に巣をつくるので(狐穴)そうした習性にもとづいて、このような祀り方をしているのではないでしょうか。
最初の階段の真ん中ほどにあるのがこの祠です。これは「猿田彦大神」とあります。
日本誕生の神話にも登場する不細工な神様ですね。(手塚治虫の「火の鳥」の中では、そう表現されています)
猿田彦というだけあって、ここには狛狐ならぬ「狛猿」がいました。
例の「見ざる言わざる聞かざる」もいます。これ、他のの稲荷にもあった「庚申塔」に彫られていたものと同じです。
猿田彦大神のすぐ上には、もうひとつの祠があります。
そこには、こんな真っ白な狐が座っていました。まるで「張り子」のようです。張り子の狐と言えば、以前松本市内の瘡守稲荷神社で見かけた巨大張り子狐を思い出します。
それにしても、なんとも愛嬌のあるお顔をしていますね。口には稲束を咥えています。白と赤のコントラストが、いかにも強烈です。
足元には、これも真っ白でかわいい子狐が、すやすやと休んでいます。
金色の珠にしっかりと抱きついています。
こちらは、その相方さんです。足元に稲束を抱いています。
そして、その祠の階段をはさんで反対側には、同じような白い狐のいる祠があります。
でも、こちらの狐はさきほどのものほど真っ白ではありません。素材の石の白さを活かしているようです。
しかし、その表情などは、さきほどのものと生き写しです。
ほら、この子狐のかわいい表情も、全く同じです。
そこからさらに階段を上るとさらにその上にも赤い鳥居が見えます。
階段を上り切ると、そこには立派なお社があります。ここが西森稲荷の本殿のようです
お社の中を見ると、そこには瀬戸物眷属がぎっしりと並んでいます。なかなか威厳がありますね。
上には、彩色された額や、白狐の絵馬などが掛けられています。
これで、もう終わりだろう、と思って帰ろうとしたのですが、何気なく社の横を見るとどうもその裏があるようなので、裏手に廻ってみるとそこには、またまた小さな祠群があるではありませんか!
小さいながらも威厳のある祠のまわりには、これまた数知れない狐たちが取り囲んでいます。まるで、狐のコロニーのようです。
これなんて、まるでリスですね。でも、絶対に狐なんでしょうね、きっと。
こんなおどけたやつもいますいったい、どんな想いで創られた狐なのでしょうか?
みんな、赤い前掛けが自慢げですね。
さきほどの張り子狐に似た、色白狐もいますよ。
いったい、どれだけの数の狐がいるのでしょうか?
こんなにたくさんの狐に、一度にしゃべりかけられたら、本当に困ってしまうでしょうね。
ほら。いかにも、何か言いたげでしょう?
中にはけっこうクールそうなママ狐もいますがね。
なんだかなあ。この作者っていったい・・・・。でも、この手の作風は、けっこう好きですね。
箱の中には、落ち葉に混じって小さな瀬戸物狐がいっぱい。
この葉っぱをみんなの力で、お金にしてくれませんかねえ
「もう、ないだろう」と思っていたのですが、その更に上にも、くずれかけたような階段があり、その先にあったのが、この祠です。もう、形も失せかけているような祠なのですが、何やらいわくありげで、不気味な感じでした。ここは、早々に退散です。

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