(くりかわいなりじんじゃ/山形県上山市松山)
取材日:2005年6月28日
栗川稲荷は、山形県内でも有数の温泉地である上山温泉街の はずれに位置し、今でも全国各地から多くの稲荷信仰の人が 参拝に訪れるという。元禄十年に、当時、備中国庭瀬の城主 であった松平信通公が、出羽の国上山の城主に赴任となり、 そのときに自らが信仰していた稲荷を持ってきたのが由来。 その赴任の道中に、稲荷大名人のお告げで、道中に利根川の 水難を避けることができた、という逸話も残されている。そ の時に陣を置いた、北葛飾の地名「栗橋」の「栗」と、利根 川の「川」をとって「栗川稲荷」と命名して祀ったという。 もともとは上山城内にあったのだが、明治になって松平家が 東京に移り、城内の稲荷が荒廃したため中村利蔵が現在の松 山に場所を移して奉祀したものだ。 |
神社は温泉街のはずれの高台にあるが、本体はなかなか見 えにくい。この入り口も細い路地からのアプローチとなり現在では、本殿に近い新道か ら入ることが多いようだ。見てのとおり、赤い鳥居が奥に連なり、稲荷神社特有の雰囲 気を、すでにここから感じ取ることができる。さあ、入ってみよう。ドキドキドキ | |
数本の鳥居群を抜けると、そこには藤棚がある。訪れたと きは、もう実がなっていたが花の咲く季節であれば赤い鳥居と周囲の緑の中で、さぞ藤 の薄紫が映えることだろうと想像される。 | |
少し階段を上ると、さらに鳥居の群れが待っている。 | |
すでに赤い色も落ち、木も朽ちかけている鳥居も多い。そ れをことさらに修理もしていない様子だが、時の流れに任せている状況が、なんとも言 えず素朴な雰囲気で、心地よい。 | |
鳥居の参道は細い石畳となって続いており、その周辺は、 林でもなく畑でもなくなんとも言えない雰囲気で囲まれている。ちょうど、紫陽花の季 節で、青と白の紫陽花が目を楽しませてくれた。 | |
歩いた参道とは別に、それと並行してもう一本の参道がある。もちろんそちらにもこの ように鳥居が連なっているのだが、なぜ二本の参道があるのだろうか?もしかしたら、 一本の参道が鳥居で埋まってしまったから、もう一本の参道を作ったのかしらん?など と、想像してみる。 | |
いったい、どこまでこの鳥居が続くのかしらん?と思って しまう。まるで狐になって延々と続く野原を歩いているような気分だ 。 | |
中には、このようにワイヤーで補強している鳥居もある。 この鳥居は、額もついておりサイズも一段と大きい。きっと中でも重要な鳥居なのかも しれない。 |
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電柱に寄りかかっているような鳥居もあるよ。大丈夫かしら? | |
左手には平行に並ぶもう一本の参道に立つ鳥居が見えている。 | |
無造作に積まれているのは、明らかに鳥居の残骸。役目を 終えてほっとしているようでもある。それにしても、これらの木材は、どうするのだろ うか?下手に処分したら、祟りでもありそうだし。 | |
ここまで来て、ようやくはるか向こうに、本殿らしきものが見えてくる。 | |
さすがに本殿の近くとなると鳥居もそれなりに立派になってくる。 | |
ほら、これが本殿。これだけ歩かされると、さすがに有難みが増すね。 | |
参道を登りきって、ようやく辿り着くのがこの本殿。境内
そのものはそれほど広くはない。しかし山形には珍しい規模の稲荷で感激してしまう。 社殿の手前には、お目当ての狛狐もおいでだ。 |
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これも木肌が美しい額。派手な着色もなく、なかなか趣がある。 | |
思い切って撮影した社の中。 赤い堤燈、赤い蝋燭が、なるほどお稲荷さん。なぜか、ぼ んぼりには千羽鶴が下げてあった。 |
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これはなんだ??白いキツネといえば、ホッキョクキツネ だが、それとも違う。イタチかテンの剥製かしらん?きっと氏子が寄贈したんだろうね |
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社殿の前に鎮座するのが、このお狐さま。御影石をツルツ ルに磨いてある。こういう仕上げも、あまり見たことがない。身体もスマートで、形と しては三嶋稲荷で見たものに近いかもしれない。尻尾は、こちらの方が少し短い。 | |
こちらは向かって左側のお狐さま。口を少し開いている。 下の写真ではっきり見えるが玉状のものを咥えている。こちらが多分オスだろうね。 |
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お狐さまのお顔。なかなかやさしそうな顔だ。威嚇するよ うな厳しさはない。山形人の性格が出ているのかなあ? | |
本殿の横には、こんな社もある。この柱のすごいこと!き っとこれも誰かの寄贈なんだろうけど。主張しすぎ。 | |
さらに、このような小さな祠群もある。これは稲荷神社に よくあるパターン。それにしても、これらひとつひとつに、謂れがあるのだろうね。 | |
これまた、不思議なものに出会ったものだ。一見、お地蔵 さんだろうと思った。ところが、どうも形の様子が違う。「もしかしたら!」と、その お堂に近づいて確かめることにした。 | |
なんと、やっぱりそれはお狐さんだった!こんな前掛けを しているお狐さんはよく見かけるものだが、このようにお堂に入っている狐は初めて見 る。それだけ大事にされているんだね。雪の多い地方にはこんなお狐さんもいるんだ。 |