唐松観音

(からまつかんのん/山形県山形市釈迦堂)

2004年9月4日奉納

またまたイレギュラーなんですが、稲荷以外のものを アップしてしまいました。「観音様」ですからね、神社ですらない。で も、どうしても気になるものを見つけてしまったので、紹介します。 唐松観音の由来は次のようなものです。平安時代に、この宝沢(ほうざ わ)の地に「炭焼権太」という長者が住んでいました。そこに、京から 「豊丸姫」という美女が訪ねてきます。清水観音のお告げで権太との縁 を知ったというのです。なんとも、ロマンチックではありませんか。ふ たりはすぐに意気投合し、夫婦になり、3人の男子をもうけて、幸せに 暮らしました。これは観音様のおかげだと知り、豊丸姫は持参した観音 像を、すでに霊場となっていた、この地に安置し「唐松観音」と名づけ たのだそうです。




山の中腹に赤く見えているのが唐松観音の寺屋です。この きわめてスリリングな寺屋は1661年、当時の山形城主が所縁の京の清水寺を模して 造ったのだそうです。
その後、幾度かの修繕を経て昭和51年に現在の建物になったようです。
馬見ヶ崎川の支流にかかる赤い橋を渡ると、そこにはこん な茶屋があります。
もともと、このあたりは山形から仙台に抜ける街道沿いで旅人たちの憩いの場ともなっ ていたのでしょう。今では、おばあちゃんがひとりできりもりしています。
ここで一休みしなければならない理由はこれで明白です。
そうです。この写真の坂道をちょっと登らなければならないのです。でも、うっそうと 繁る木立に囲まれて登るのはとても気持ちのよいものです。
坂道を少し上ったところで、ふと上を見上げると、そこに は目指す観音様の建物が見えます。
が。なんとスリリングなことでしょう!完璧にオーバーハング状態です。なるほど、京 都の清水の舞台を模したということが、よくわかります。
坂を上り切ると、今度は階段が待っています。徐々に神様に近づいていく、 という仕掛けなんですね。
そして、ようやくたどりついた建物の内部がこれです。な んともおごそかな空気が漂い、信仰心の薄いわたしでも、つい緊張してしまうような雰囲 気なのです。あきらかに「霊的な存在」を感じます。
ふと上を見ると、鴨居に数枚の額がかかっており、そこに は、なんと結婚式の風景が描かれています。同じような額が数枚、奉納されています。
これはいったい、何?
これは、実は亡くなった人の結婚式なのです。つまり、若 くして亡くなり、結婚できずに世を去った故人に、せめてあの世で一緒に暮らせるよう にと、架空の花嫁をあてて、結婚式の様子を絵に描き、奉納したものだそうです。
子を亡くした両親のせつない想いが伝わってくるようで、 思わずこの絵馬の前で絶句してしまいました。人の「気持ち」というのは、本当に熱く て強いものなんだな、と。

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